長野の家House in Nagano

長野の家House in Nagano

敷地は長野市街から北東側に外れた山裾に位置し、辺りは緩やかな南下がりの斜面が続いている。田畑の広がりのなかに住宅が疎らにあるような素朴で穏やかな環境である。北側には小高い山を仰ぎ、南側は大きく見通しが開け、遠方には長野盆地を抱く山の稜線が広がっている。

これらの山々に抱かれているという確かな安心感を拠り所にして、土地の大らかさに身を委ねるように、伸びやかに開きたい。この場所に身を置いたときのそんな思いが、今回の取り組みの芯にあり続けた。

夫婦と高齢の母のためのすまいで、元々同じ敷地にあった住宅の建て替えである。パブリックからプライベートへ、性格の異なる室ごとに三つのまとまりに分け、それぞれを東西に一筋の動線で繋いでいる。立ち姿は小山の連なりのように、三つの矩形をずらしながら変化をつけ、周囲の環境に馴染ませるよう高さを抑えつつ、二階建てとなる部分と平屋とのボリュームのバランスを、内部から求められる気積と合わせて整えた。子世帯との同居にも対応出来るように余裕を持たせた室数としながら、夫婦だけの暮らしとなる場合には、一階だけで生活を完結できる構成としている。

暮らしの軸となる中央部は、居間・食堂をひと続きのゆとりのある空間としながら、それぞれに北庭と南の眺望へ開く、異なる居場所の特性を持たせた。書斎や台所も繋がりながら適度に閉じることで、家族の気配を感じつつ、それぞれの在処が生まれるよう計画した。

建築が一円の環境と緩やかに続き合いながら、日々の家族の生活、時に人が集う賑わいの場面、そしてこれから紡がれていく長い月日のなかで起こる暮らしの変化をも受け止める、大らかな支えとなることを目指した。

建物概要

所在地
長野県長野市
主要用途
専用住宅
敷地面積
401.71 m²
建築面積
145.80 m²
延床面積
169.02 m²
構造
木造
規模
地上 1 階 一部 2 階
竣工
2019 年 4 月
施工
中村工務店

撮影:畑拓(下二点のみ:竹島兄人)